「自然由来だから身体にいい」とは限らない!アレルゲンは肌からも入ってきます

こんにちは、ゆうスキンクリニック医師の森しほです!

「赤ちゃんの肌には、できるだけ自然なものを使いたい」

そう考える親御さんは少なくありません。

オーガニック、天然由来、植物エキス配合、無添加……。

こうした言葉を見ると、「肌にやさしそう」と感じますよね。

その気持ちはとてもよく分かります。

ただ、医師として一つお伝えしておきたいことがあります。

「自然由来だから身体にいい」とは限りません。

そして、アトピーや敏感肌の方では、そもそも
「肌からアレルゲンが入ってくる」ということを知っておいてほしいのです。

◆ アレルギーは「食べること」だけで起こるわけではありません

アレルギーというと、

「アレルギーの原因になるものを食べたから起こる」

というイメージがあると思います。

もちろん、食べることは重要です。

でも近年、食物アレルギーを考えるうえで注目されているのが、経皮感作です。

つまり、

皮膚から入ったものによって、アレルギー反応を起こす準備ができてしまう

という考え方です。

特に赤ちゃんやアトピー性皮膚炎のある人では、皮膚のバリア機能が低下しています。

健康な皮膚は、外から異物が入り込むのを防ぐ壁のようなもの。

ところが、乾燥していたり、湿疹があったり、掻き壊していたりすると、その壁に隙間ができます。

すると、普段なら入りにくい物質が皮膚から入り込み、
免疫がそれを「異物」として認識する可能性があります。

これが、食物アレルギーを考えるときにも重要な経皮感作です。

一方で、口から食べたものに対しては、腸管の免疫系が
「これは食べ物だから、むやみに攻撃しない」という免疫寛容を作る仕組みがあります。

そのため、

「食べたらアレルギーになる」だけではなく、「傷んだ皮膚から先に感作されることがある」

という視点が大切なのです。

もちろん、これは「肌のほうが消化器よりアレルギーになりやすい」という単純な話ではありません。

ですが、皮膚バリアを守ることが、アレルギーを考えるうえでも重要だということは知っておいて損はありません。

◆ ここで思い出したい「茶のしずく石鹸」の問題

これを考えるとき、思い出されるのが「茶のしずく石鹸」の問題です。

製品に含まれていた加水分解コムギ末によって小麦アレルギーを発症し、
その後、小麦を食べることで症状が出るようになった事例が問題になりました。

これは、

「自然派のものは危険」

という話ではありません。

むしろ私がお伝えしたいのは、

「自然」「天然」「植物性」という言葉だけで、安全性を判断しないでほしい

ということです。

植物にも、食べ物にも、化粧品にも、アレルギーの原因になる成分はあります。

「自然だから安心」

「化学物質だから危険」

という二択ではありません。

大切なのは、

その成分が何なのか。
その人の肌に刺激がないのか。
皮膚のバリアを壊さないのか。

ということです。

◆ では、子どもの肌には何を塗ればいい?

ここで一番聞かれるのが、

「じゃあ結局、何を使えばいいの?」

ということですよね。

アトピー性皮膚炎では、皮膚の炎症を抑える治療とともに、
保湿剤を使って皮膚のバリア機能を保つことが大切です。

日本皮膚科学会の2024年のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも、
保湿剤によるスキンケアが推奨されています。

では、具体的には何を選ぶのか。

赤ちゃんや敏感肌のお子さんでは、まずは、

「できるだけシンプルで、刺激になりにくい保湿剤」

を選ぶのが一つの方法です。

たとえば白色ワセリンなどのワセリン系の保護剤。

医療機関では、ヘパリン類似物質などの保湿剤が使われることもあります。

大切なのは、

「一番自然なもの」を探すことではありません。

その子の肌に合っていて、刺激がなく、毎日続けられるものを選ぶことです。

◆「保湿すればアトピーを防げる」は、ちょっと違う

ここは医学的に大切なので、正直にお伝えします。

「赤ちゃんのころから保湿すれば、アトピーにならない」

とまでは、現在の医学では言えません。

日本皮膚科学会の2024年ガイドラインでも、
新生児期から保湿剤を塗ることを、アトピー性皮膚炎の発症予防目的で一律にすすめることはできない、としています。

実際、乳児期から保湿することでアトピー性皮膚炎の発症を減らせるかについては、
研究結果が一致していません。

一方で、すでにアトピー性皮膚炎がある子どもでは、
保湿剤によって乾燥を改善し、皮膚の状態を整えることは重要です。

つまり、

「保湿=アトピー予防の魔法」ではない。

でも、

「肌のバリアを守る」という意味では、とても大切。

このくらいの理解がちょうどいいと思います。

◆「自然派」より、「その子の肌にやさしいか」

私は皮膚科医として、ここを一番お伝えしたいです。

「天然だから安心」

「オーガニックだから肌にやさしい」

「植物エキスだから赤ちゃんにも安心」

とは限りません。

逆に、

「人工的な成分だから怖い」

というのも正確ではありません。

自然か人工かではなく、

その成分が何なのか。
どんな濃度なのか。
その子の肌に刺激やアレルギーを起こさないか。

そこを見ることが大切です。

特にアトピーや敏感肌のお子さんでは、香料や植物エキスなど、
必ずしも必要ではない成分をたくさん足すより、

シンプルな保湿剤で、肌のバリアを守る。

という選択肢があります。

「自然なものを使ってあげたい」という親御さんの気持ちは、とても優しいものです。

だからこそ、

「自然=安全」ではない。

そして、

「人工=危険」でもない。

ということを知っておいてください。

子どもの肌を守るために大切なのは、

「何が一番ナチュラルか」ではなく、

「何がこの子の肌にとって一番刺激が少なく、バリアを守れるか」

です。

赤みやかゆみ、湿疹、ジュクジュクした部分がある場合は、
「保湿だけしておけば大丈夫」と長く様子を見すぎず、皮膚科に相談してください。

肌のバリアを守ることは、肌をきれいにするためだけではありません。

外からの刺激やアレルゲンから、子どもの小さな体を守る「壁」をつくることでもあるのです。

この記事の監修

皮膚科 森医師

森しほ

ゆうスキンクリニック治療最高責任者
皮膚科医/産業医/抗加齢医学会専門医
皮膚科のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。
あなたのお力になれるよう、全力で診療させていただきます。