皮膚科で採血が必要な理由

こんにちは、ゆうスキンクリニック医師の森しほです!
「薬を塗っているのに、アトピーがなかなかよくならない」
「蕁麻疹を繰り返している」
「ニキビや湿疹だけでなく、傷もなんだか治りにくい」
そんなとき、皮膚だけを見て終わりにしないことも大切です。
皮膚は、体のいちばん外側にある臓器です。
そのため、栄養状態や血糖、炎症、免疫、肝臓や腎臓の状態など、全身の変化が皮膚に表れることがあります。
もちろん、採血をすれば「皮膚トラブルの原因がすべてわかる」というわけではありません。
でも、「なぜ治りにくいのか」を考えるヒントになることがあります。
今回は、皮膚症状が気になるときに知っておきたい採血項目について解説します。
◆ 採血項目それぞれ何を表している?
① CRP
CRPは、体の中で炎症が起きているときに上昇する代表的な血液検査です。
感染症や炎症性疾患など、さまざまな原因で上昇します。
皮膚に赤みや腫れ、痛みなどがある場合にも参考になりますが、CRPだけで「皮膚の炎症の原因」がわかるわけではありません。
また、CRPはあくまで「炎症があるかもしれない」という手がかり。
正常だから炎症が絶対にない、というわけでもありません。
皮膚症状と全身症状を合わせて考えることが大切です。
② Fe・フェリチン
「鉄が足りない」と聞くと、貧血を思い浮かべる方が多いと思います。
でも、鉄の状態は血色素量だけでは十分にわからないことがあります。
Feは血液中の鉄、フェリチンは体に蓄えられている鉄の量をみる指標のひとつです。
鉄が不足すると、疲れやすい、息切れ、集中しにくいなどの症状が出ることがあります。
さらに、鉄は皮膚や髪、爪などの組織を維持するためにも必要な栄養素です。
「肌荒れが続く」「髪が抜けやすい」「爪が割れやすい」といった場合には、鉄の状態を確認することがあります。
ただし、フェリチンは炎症でも上昇するため、数値は他の検査と合わせて判断します。
③ Zn(亜鉛)
亜鉛は、皮膚の健康を考えるうえで無視できない栄養素です。
細胞の増殖や修復、免疫機能など、さまざまな働きに関わっています。
不足すると、味覚異常、食欲低下、脱毛、皮膚症状、傷の治りにくさなどにつながることがあります。
特に、
「傷がなかなか治らない」
「口内炎を繰り返す」
「肌荒れと同時に食欲が落ちている」
という場合には、亜鉛の状態を確認する意味があります。
ただし、亜鉛だけを補えば皮膚疾患が治る、という単純な話ではありません。
不足している場合に、その原因まで考えることが大切です。
④ 葉酸・ビタミンB群
葉酸は、赤血球を作ったり、細胞が正常に増殖したりするために必要なビタミンです。
不足すると、貧血や疲労感などにつながることがあります。
皮膚は細胞の生まれ変わりが盛んな組織です。
そのため、皮膚の状態を見るときにも、栄養状態は無視できません。
葉酸だけでなく、ビタミンB12なども必要に応じて確認します。
⑤ ビタミンD
ビタミンDというと「骨」のイメージが強いかもしれませんが、実は免疫機能にも関係しています。
皮膚にもビタミンDの代謝に関わる仕組みがあり、アトピー性皮膚炎などとの関連についても研究されています。
ただし、「ビタミンDが低いからアトピーになった」と断定できるわけではありません。
あくまで全身状態を考える材料のひとつです。
⑥ 白血球・赤血球・血小板
血球検査も、皮膚だけを見るときには見落とされがちですが、大切な情報になります。
白血球は感染や免疫反応などと関係します。
赤血球・血色素量・ヘマトクリット・MCV・MCH・MCHCなどからは、貧血の有無やタイプを考える手がかりが得られます。
血小板は血液を固める働きに関係しています。
つまり、同じ「肌荒れ」でも、血液の状態によって見えてくる背景が違うことがあります。
⑦ GLU(血糖)
意外に思われるかもしれませんが、血糖も皮膚を見るうえで大切です。
血糖値が高い状態が続く糖尿病では、感染症にかかりやすくなったり、傷が治りにくくなったりすることがあります。
「小さな傷なのに、なかなか治らない」
というときには、皮膚の治療だけでなく、血糖など全身状態を確認することもあります。
必要に応じてHbA1cなどを組み合わせて評価します。
⑧ AST・ALT・γ-GT、BUN・クレアチニン・eGFR
皮膚科なのに肝臓や腎臓?と思われるかもしれません。
でも、薬を使う場合にはとても重要です。
AST・ALT・γ-GTなどは主に肝臓の状態を確認するために使います。
BUN、クレアチニン、eGFRは腎臓の働きを評価するための指標です。
皮膚の治療では、外用薬だけでなく、内服薬などを使うこともあります。
そのため、
「この薬を安全に使える体の状態か」
という視点でも血液検査が役立ちます。
⑨ CK(CPK)
CKは、主に筋肉などの細胞が傷ついたときに上昇する酵素です。
皮膚症状だけでなく、筋肉痛や筋力低下などの症状が一緒にある場合には、全身状態を考える材料になります。
皮膚の病気の中には、皮膚だけではなく全身に関係する疾患もあります。
そのため、「皮膚に何が出ているか」だけではなく、「体全体に何が起きているか」を見ることがあります。
⑩ LDL・HDLコレステロール
コレステロールは、直接「肌荒れの原因」を調べる検査ではありません。
ただ、生活習慣や代謝状態を含めて全身状態を把握するときに役立ちます。
皮膚症状だけを切り取らず、血糖、脂質、肝臓、腎臓などを含めて体全体を見る。
これが大切な場面があります。
⑪ 非特異的IgE
「アレルギー体質だから、IgEが高いんですよね?」
よく聞かれる質問です。
非特異的IgEは、アレルギー素因を考える際の参考になる検査です。
ただし、数値が高いからといって、必ず特定のアレルギーがあるとは限りません。
また、IgEが正常でもアレルギー疾患を否定できるわけではありません。
症状や経過、必要に応じて特異的IgEなどの検査と組み合わせて判断します。
◆「皮膚が治らない」とき、皮膚だけを見ない

アトピー性皮膚炎、蕁麻疹、湿疹、ニキビ、傷など。
皮膚に症状が出ていても、その背景にはさまざまな要因があります。
栄養不足がないか。
貧血や鉄欠乏がないか。
血糖に問題がないか。
炎症が続いていないか。
免疫反応に特徴がないか。
肝臓や腎臓は問題ないか。
必要な検査は、症状や治療内容によって変わります。
「皮膚の薬を塗っているのに、なかなかよくならない」
そんなときこそ、皮膚だけではなく、体の中にも目を向けてみる。
採血は、そのためのひとつの手がかりになります。
なお、血液検査の数値は単独で判断するものではありません。
基準値から少し外れたからといって、必ず病気があるわけでもありません。
症状、診察所見、これまでの経過などと合わせて考えていくことが大切です。
この記事の監修

森しほ
ゆうスキンクリニック治療最高責任者
皮膚科医/産業医/抗加齢医学会専門医
皮膚科のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。
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