「ステロイドの副作用が怖い」人へ。実は、こんな使い方が治療を長引かせます

「ステロイドって副作用が怖いですよね」
アトピー性皮膚炎の診察をしていると、よく聞く言葉です。
もちろん、ステロイド外用薬にも副作用はあります。
長期間、漫然と使えば、皮膚が薄くなる、毛細血管が目立つ、ニキビのような症状が出る、感染症が起こりやすくなるなど、局所的な副作用が起こることがあります。
だからこそ、皮膚科では「強い薬をずっと塗り続ける」のではなく、
皮膚の状態を見ながら、薬の強さや塗る頻度を調整していきます。(公益社団法人日本皮膚科学会)
ところが、ここで一つ注意してほしいことがあります。
「副作用が怖いから」と自己流でステロイドを弱くしたり、量を減らしたり、つけたりつけなかったりすることです。
これ、実は治療が長引く原因になることがあります。
◆ 「ちょびちょび塗り」は、火事に消火器をちょっとだけ使うようなもの
アトピーの炎症は、私はよく「火事」にたとえて説明します。
皮膚が真っ赤になって、かゆくて、ジュクジュクしている。
これは、いわば火事が起きている状態です。
ここで消火器を一瞬だけ使って、表面の火が見えなくなったからといって、
すぐに消火をやめたらどうでしょう。
まだ中で燻っているかもしれません。
皮膚も同じです。
見た目が少し良くなったからといって、自己判断で急にステロイドを中止すると、
再び炎症が強くなってしまうことがあります。
日本皮膚科学会も、炎症が治まっても急に中止すると悪化することがあるため、
症状を見ながら薬の強さを下げたり、塗る回数を減らしたりするよう説明しています。(公益社団法人日本皮膚科学会)
つまり、
「怖いから少しだけ」
「今日は塗らない」
「赤みが引いたからもうやめよう」
を自己判断で繰り返していると、炎症がなかなか十分に抑えられません。
そして再燃する。
またステロイドを使う。
また怖くなる。
また減らす。
この繰り返しになってしまうことがあります。
◆ 大切なのは「強い薬を使わない」ことではありません
大切なのは、
必要なときに、必要な強さの薬を、必要な量使って、炎症をしっかり抑えること。
そして、良くなってきたら、医師と相談しながら薬の強さや頻度を下げていくことです。
アトピー性皮膚炎の治療では、皮疹の重症度に合わせてステロイドの強さを選択します。
「強い薬=悪い薬」ではありません。
必要以上に強い薬を使うのは避ける一方で、炎症が強いのに弱い薬だけで抑えようとすれば、
十分な効果が得られないことがあります。(公益社団法人日本皮膚科学会)
ですから、
「先生、弱いステロイドを出してください」
と患者さんから言われることがありますが、本当に大切なのは「弱い薬を使うこと」ではなく、
今の皮膚の状態に合った薬を使うことです。
◆ そして、もう一つ大切なのが「塗る量」です
「ステロイドって、ほんのちょっとでいいですよね?」
これもよく聞かれます。
実は、塗る量には目安があります。
それがFTU(finger tip unit)という考え方です。
チューブから大人の人差し指の先端から第一関節まで出した量、約0.5g。
これで、成人の手のひら約2枚分の面積を塗るのが一つの目安です。(日本皮膚科学会)

「え、そんなに?」
と思うくらい、意外としっかりした量です。
実際に塗ると、かなりペットリします。
場合によっては、
「ティッシュを貼ったらくっつくくらい」
と説明することもあります。
「ベタベタするから、少しだけにしよう」
ではなく、必要な量をきちんと塗ることが大切です。
◆ 「治ったから、今日からやめます」も自己判断しないでください
アトピー性皮膚炎は、良くなったり悪くなったりを繰り返すことがあります。
そのため、症状が落ち着いた後も、状態によっては塗る頻度を減らしたり、薬の強さを下げたり、再燃しやすい場所に定期的に抗炎症薬を使ったりする「プロアクティブ療法」が行われることもあります。(日本皮膚科学会)
つまり、治療は
「赤いからステロイド」
「赤くなくなったから突然ゼロ」
という単純なものではありません。
しっかり抑える。 そして、状態を見ながら少しずつ減らしていく。
この考え方が大切です。
◆ 副作用が怖いからこそ、自己調整しない
私自身、患者さんに塗り方を説明するときは、実際にステロイドを手に取って塗ってみせることもあります。
私自身はこれまで説明のために塗ることがありますが、
私に限っていえば、それで副作用が出たことはありません。
ただし、これは「ステロイドには副作用がない」という意味ではありません。
副作用が出ていないか、皮膚の状態がどう変化しているかを診察で確認しながら使っているからです。
ステロイド外用薬は、正しく使えばアトピー性皮膚炎の炎症をしっかり抑えるための、とても重要な治療薬です。
2024年のアトピー性皮膚炎診療ガイドラインでも、必要なステロイドを適切に使用し、副作用に注意しながら治療することが推奨されています。(日本皮膚科学会)
だから、
「副作用が怖いから自分で量を減らす」
「弱い薬に変えてもらう」
「良くなったから勝手に中止する」
ということは、できればやめてください。
副作用が怖いなら、その不安こそ診察で医師に伝えてください。
今の皮膚にはどの強さが必要なのか。
どのくらいの量を塗るのか。
いつまで続けるのか。
いつから減らしていくのか。
副作用が出ていないか。
そこを一緒に確認しながら治療していきましょう。
「ステロイドは怖いから、なるべく使わない」
ではなく、
「必要なときに、正しく使って、炎症をきちんと消す」
ことが、アトピーを長引かせないためにも大切です。
この記事の監修

森しほ
ゆうスキンクリニック治療最高責任者
皮膚科医/産業医/抗加齢医学会専門医
皮膚科のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。
あなたのお力になれるよう、全力で診療させていただきます。
