ステロイドの副作用が怖い方へ|「脱ステロイド」に走る前に知ってほしいこと。治らない皮膚炎の原因は亜鉛不足や鉄不足かもしれません

こんにちは。医師の森しほです。

皮膚炎や湿疹の診察をしていると、多くの患者さんからこんな相談を受けます。

 「ステロイドの副作用が心配です。」
「なるべく使わない方法はありませんか?」
「ネットで脱ステロイドを見て、不安になりました。」

確かに、「ステロイド副作用」と検索すると、皮膚が薄くなる、依存する、やめられなくなるなど、
怖い情報がたくさん目に入ります。

副作用について知ることは大切です。
しかし、インターネットには医学的根拠が乏しい情報も少なくありません。

特に注意していただきたいのが、「脱ステロイド」を強く勧める情報です。

もちろん、必要以上にステロイドを使い続けることは避けるべきです。
しかし一方で、「ステロイドは悪だから今すぐやめよう」という極端な考え方は、
かえって皮膚炎を悪化させてしまうことがあります。

さらに、脱ステロイドを掲げながら、高額な健康食品やサプリメント、特殊な化粧品、民間療法へ誘導するケースもあります。

「病院では治らない」
「薬ではなく自然治癒」

◆ ステロイドの副作用はあります。でも、正しく使えば非常に安全性の高い薬です

ステロイド外用薬には副作用があります。

代表的なものとして

  • 皮膚が薄くなる(皮膚萎縮)
  • 毛細血管が目立つ
  • ニキビや毛包炎
  • 酒さ様皮膚炎
  • 真菌や細菌感染が悪化しやすくなる

などがあります。

これらは主に「強いステロイドを長期間・漫然と使用した場合」に起こりやすい副作用です。

一方で、日本皮膚科学会では、湿疹や皮膚炎の標準治療としてステロイド外用薬を推奨しています。

適切な強さを選び、必要な期間だけ使用することで、多くの皮膚炎は安全にコントロールできます。

「副作用が怖いから塗らない」ということ自体が、治療を難しくしてしまうことも少なくありません。

◆ 実は一番多いのは「塗り方」が間違っているケース

「ちゃんと塗っています。」

そうおっしゃる患者さんでも、実際に塗る量を伺うと、ほとんどの場合で少なすぎます。

皮膚科ではFTU(Finger Tip Unit)という考え方があります。

チューブから大人の人差し指の第一関節まで出した量(約0.5g)は、手のひら約2枚分の面積に塗る量です。

「こんなに塗るんですか?」

と驚かれる方も多いですが、それくらいでちょうど適量です。

塗った直後は少し光沢があり、ティッシュを軽く当てるとくっつくくらいが目安です。

逆に「薄く伸ばしておきました」「少しだけ塗っています」では、十分な効果が得られないことがあります。

◆ 良くなったからといって、自己判断でやめない

もう一つ多いのが、症状が軽くなった時点でやめてしまうことです。

皮膚の表面がきれいに見えても、皮膚の中ではまだ炎症が残っていることがあります。

そこで治療を中断すると、数日後にまた赤くなり、

「やっぱり治らない」

「この薬は効かない」

となってしまいます。

実際には薬が効かなかったのではなく、
炎症が十分に落ち着く前に中止してしまっただけ、ということも珍しくありません。

医師から「1日2回」「あと1週間続けましょう」と指示された場合は、
その期間を守ることが再発予防につながります。

◆ 皮膚炎が治らない原因は、薬だけではないことがあります

「薬をきちんと塗っているのに皮膚炎が治らない。」

そんなときは、別の原因を考える必要があります。

例えば

  • 接触している化粧品や金属によるかぶれ
  • 真菌感染
  • ダニや疥癬
  • アトピー性皮膚炎以外の皮膚疾患
  • 糖尿病などの全身疾患

など、さまざまな原因があります。

そして、私が診療で見逃したくないと考えているのが栄養不足です。

◆ 亜鉛不足と皮膚炎には深い関係があります

亜鉛は皮膚の健康を保つために欠かせないミネラルです。

皮膚の細胞は毎日生まれ変わっています。

その細胞分裂やタンパク質合成、傷の修復、免疫機能には亜鉛が必要です。

そのため、亜鉛不足になると

  • 湿疹
  • 治りにくい皮膚炎
  • 傷が治りにくい
  • 口内炎
  • 抜け毛
  • 味覚障害

などの症状が出ることがあります。

日本臨床栄養学会の診療指針でも、皮膚炎は亜鉛欠乏症の代表的な症状として挙げられています。

また、日本皮膚科学会雑誌でも、皮膚の恒常性維持には亜鉛が重要であることが解説されています。

「ステロイドを塗ってもなかなか治らない。」

そんな患者さんの中には、採血をして初めて亜鉛不足が分かる方もいます。

もちろん、すべての皮膚炎が亜鉛不足というわけではありません。

しかし、原因の一つとして考えておく価値は十分にあります。

◆ 鉄不足も見逃せません

鉄というと「貧血」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

しかし、鉄は皮膚や毛髪、爪を作るためにも必要です。

貯蔵鉄(フェリチン)が不足すると

  • 傷が治りにくい
  • 抜け毛
  • 爪が割れやすい
  • 疲れやすい

などの症状が現れることがあります。

ヘモグロビンが正常でもフェリチンだけ低い「隠れ鉄不足」の方も少なくありません。

治りにくい皮膚炎では、必要に応じてフェリチンまで確認することがあります。

◆ 一般の日本人でも亜鉛不足は珍しくありません

厚生労働省「国民健康・栄養調査」では、年代によっては亜鉛摂取量が推奨量を下回る人が少なくありません。

また、日本臨床栄養学会では、高齢者だけでなく、
偏食、ダイエット、胃腸疾患、妊娠・授乳中などでも亜鉛不足が起こりやすいとされています。

「健康そうだから大丈夫」とは限らないのです。

◆ 外から治すことと、内側から治すことの両方が大切です

皮膚炎は軟膏だけで治す病気ではありません。

皮膚を作る材料となるタンパク質、鉄、亜鉛、ビタミン類が不足していれば、
どれだけ良い軟膏を使っても治りにくくなることがあります。

そのため当院では、治療が長引く場合には皮膚だけを見るのではなく、
必要に応じて採血で栄養状態も確認しています。

原因が分かれば、軟膏だけでは改善しなかった症状が良くなることもあります。

◆ まとめ

「ステロイドの副作用が怖い」というお気持ちは、とてもよく分かります。

しかし、必要な治療を避けてしまうことで、かえって皮膚炎が長引き、
結果的に長期間ステロイドを使わざるを得なくなることもあります。

大切なのは、「使わないこと」ではなく、「正しく使うこと」。

そして、もし皮膚炎がなかなか治らない場合は、「薬が弱いから」と決めつける前に、
その原因を一緒に探していきましょう。

塗り方や塗る量、生活習慣、かぶれの原因、そして亜鉛や鉄などの栄養状態まで確認することで、
改善への糸口が見つかることがあります。

皮膚は、体の内側の状態を映し出す鏡でもあります。

「治らない皮膚炎だから仕方ない」とあきらめず、一度原因を見直してみませんか。

この記事の監修

皮膚科 森医師

森しほ

ゆうスキンクリニック治療最高責任者
皮膚科医/産業医/抗加齢医学会専門医
皮膚科のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。
あなたのお力になれるよう、全力で診療させていただきます。

参考文献

  • 日本皮膚科学会「アトピー性皮膚炎診療ガイドライン」
    https://www.dermatol.or.jp/medical/guideline/
  • 日本皮膚科学会雑誌「亜鉛欠乏と皮膚疾患」
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/dermatol/135/1/135_51/_article/-char/ja
  • 日本臨床栄養学会「亜鉛欠乏症の診療指針2018」
    https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32331308/
  • 厚生労働省「国民健康・栄養調査」
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/eiyou/houkoku.html

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