帝王切開の傷、「気にしすぎ」じゃない!保険で治療できることもあります
こんにちは、ゆうスキンクリニック医師の森しほです!
子育て中のママのお悩みとしてよくご相談を受けるのが、帝王切開の傷あとについてです。
「もう綺麗にしても意味ないじゃん、お互い歳だし」
「傷あと直すって、いくらかかるの?」
……旦那さん。
その一言、ちょっと待ってください。
悪気はないのかもしれません。
でも帝王切開を経験した方からすると、
「いや、あなたのお腹じゃないからね?」
と言いたくなること、ありませんか。
しかも傷あとって、単に「見た目が気になる」だけじゃないんです。
「下着が当たるとかゆい」
「赤く盛り上がってきた」
「たまにズキズキする」
「子どもとお風呂に入ったとき、なんとなく隠してしまう」
「鏡に映ると、出産の大変だったことまで思い出す」
そんなご相談があります。
◆ 「元気に産まれたんだからいいじゃん」……それとこれは別です
帝王切開の傷について話すと、
「でも赤ちゃんが無事だったんだから」
「頑張った証でしょ」
「母の勲章」
と言われることがあります。
もちろん、そう思える方もいます。
でも、
「大切な出産の傷であること」と「傷がつらいこと」は、同時にあっていいんです。
感謝しているから、かゆくなくなるわけではありません。
子どもがかわいいから、傷を気にしてはいけないわけでもありません。
ましてや、パートナーに
「誰に見せるわけでもないんだから」
なんて言われたら、
「誰よりも大切なひとに毎日見られるでしょ…?そう、私。」
と言いたくなりますよね。
◆ 実は、帝王切開は珍しいことではありません
厚生労働省の2023年の医療施設調査では、調査月に行われた分娩のうち、帝王切開は全体の23.0%でした。
病院に限れば29.1%です。
つまり今の日本では、帝王切開で出産すること自体、決して珍しいことではありません。
そして、その後の傷あとに悩んでいる人もいます。
2025年に発表された、日本国内の帝王切開後6~18か月の女性991人を対象とした研究では、自己評価を含む調査で66.0%に肥厚性瘢痕やケロイドなどの「異常瘢痕」が認められたと報告されています。
さらに、異常瘢痕があるグループでは、ないグループより皮膚に関連するQOLが低く、特に「症状・感情」の領域への影響が大きかったとされています。
もちろん、この66%という数字をすべての帝王切開経験者にそのまま当てはめることはできません。
ただ少なくとも、
「こんなこと気にしているの、私だけかな」
と思わなくて大丈夫です。
◆ 赤い・かゆい・盛り上がる傷は、「美容」だけの話ではありません

帝王切開のあとが、
- 赤みを帯びている
- 硬く盛り上がっている
- かゆい
- 痛い
- 傷の範囲が広がってきた
という場合、「肥厚性瘢痕」や「ケロイド」になっていることがあります。
日本創傷外科学会も、ケロイドができやすい場所の一つとして、帝王切開後の下腹部を挙げています。
「傷あとなんだから仕方ない」と何年も我慢している方がいるのですが、ここはぜひ知っていただきたいところ。
状態によっては、保険診療で治療できる場合があります。
「傷あと治療=高額な美容医療」とは限りません。
◆保険診療では、どんな治療をするの?
診察で肥厚性瘢痕やケロイドなどと判断された場合、症状や状態に応じて、
ステロイドの塗り薬や貼付剤、ステロイドの局所注射
などを使用することがあります。
日本形成外科学会などによる診療ガイドラインでも、肥厚性瘢痕について、ステロイド局所注射は自覚症状の緩和に有効、ステロイド軟膏や貼付剤でも症状の改善が期待できるとされています。
もちろん、
「注射をすれば必ず消える」
というわけではありません。
傷の種類、赤み、厚み、いつ手術をしたかなどによって、向いている治療は違います。
また、単純に見た目をもっときれいにしたい、質感や色を改善したい、といった場合には自費診療になる治療もあります。
ゆうスキンクリニックでは、まず傷の状態を診察したうえで、保険診療が適するのか、自費診療も含めて考えるのかをご相談できます。
◆「今さら治して何になるの?」と言われたら
全国の旦那さん、パートナーのみなさん。
奥さまから、
「帝王切開の傷、ちょっと治したいんだよね」
と言われたときに、
「え、誰に見せるの?」
は、禁句です。
フォローのつもりもあるかもしれませんが、本人が気になる、それだけでも十分な理由です。
かゆいなら、なおさら。
痛いなら、なおさら。
そして、見るたび少し嫌な気持ちになるなら、その気持ちも無視しなくていいと思います。
帝王切開では、皮膚だけではなく身体に大きな負担がかかります。
出産後はそこから授乳、夜泣き、抱っこ、家事……と、傷をゆっくり眺めていたわけでもありませんよね。
数年たってやっと、
「あれ? 私、この傷ずっと嫌だったかも」
と気づく方だっていると思います。
今さらではありません。
◆ 「母親なんだから我慢」から、一個くらい卒業していい

出産すると、
子どもの健診。
子どもの予防接種。
子どもの皮膚科。
子どもの歯医者。
気づけば、自分の病院だけずーっと後回し。
そんな方、本当に多いです。
だから帝王切開から1年でも、3年でも、もっと経っていても、
「この傷、一度診てもらおうかな」
と思ったら、それで大丈夫です。
かゆい。痛い。赤い。盛り上がっている。
そんな症状がある傷は、そもそも「美容だけ」の問題ではないかもしれません。
保険診療で対応できるケースもあります。
そして見た目について相談することも、私は全然悪いことだと思いません。
毎日のお風呂で見る自分のお腹ですから。
「もう仕方ない」と決めてしまう前に、一度皮膚科で見せてくださいね。
これを読んでくれている方、もし身近な方が帝王切開の傷あとに悩んでいることを打ち明けてくれたら、「ずっと気になってたんだね」と言ってあげましょう。
この記事の監修

森しほ
ゆうスキンクリニック治療最高責任者
皮膚科医/産業医/抗加齢医学会専門医
皮膚科のことなら、どんなことでもお気軽にご相談ください。
あなたのお力になれるよう、全力で診療させていただきます。
参考資料
- 厚生労働省「令和5年 医療施設(静態・動態)調査」:2023年9月の帝王切開率は全体23.0%、一般病院29.1%、一般診療所15.3%。
- 日本形成外科学会ほか「ケロイド・肥厚性瘢痕診療ガイドライン」:肥厚性瘢痕に対するステロイド局所注射、軟膏、貼付剤について推奨を掲載。
- 日本創傷外科学会「傷跡の治療について」:帝王切開後の下腹部をケロイドが生じる部位の一つとして紹介。
- Sugita Y, et al. Impact of abnormal cesarean section scar formation on quality of life and postpartum depression: A cross-sectional study in Japan. International Journal of Gynecology & Obstetrics, 2025. 日本の帝王切開後女性991人を対象とした全国横断調査。
