ブラックボックス展でなぜ問題が生じたかの、心理学的な分析。

ブラックボックス展でなぜ問題が生じたかの、心理学的な分析。

ブラックボックス展って?

こんにちは。ゆうきゆうです。

さてあなたは「ブラックボックス展」というものをご存じでしょうか。

つい最近まで東京で開催されていた、「内容がまったくの謎(ブラックボックス)な展示」のことです。

こちら、開催してから、様々な人が訪れ、最大で5時間待ちになることもあったようです。大盛況です。

そしてTwitterやブログなど、色々な場所で、

「ブラックボックス展、ここには書けないけど、すごかった…!」
「ブラックボックス展、詳しくは言えないけど、ひどかった…!」

などの、「詳細がまったく分からない、断片的な情報」が流れていました。

というのも、入るに際して、「中で起こったことの詳細を、ネットで絶対に書かない」という誓約書を結ばされるそうです。

そのためネットでも明確に中のことが分からず、文字通り「ブラックボックス」になっていました。

自分自身も、そういう書き込みをネットで見て、
「面白そう! いつか行ってみたい!」
と思っていました。

でも直後に「でもなんか面倒くさい」という気持ちに封殺され、気づくと終わっていました。自分でも、自分の時に怠惰な性格を直したいです。

特に「5時間待ち」というのは、さすがに自分には耐えられませんでした。

しかも恐るべきことに、5時間ほど並んでも、入り口にいる「門番」の人が「キミは入っていい」「キミは入ってはダメ」というように、「選別」をされ、何と入る前に追い出されてしまうこともあるとのこと。恐怖です。並んだ時間を返して。並んでないですけど返してください。

さて実際、このブラックボックス展とは、どういうものだったのでしょうか?

ブラックボックス展の正体

実は答えはシンプルで、「ただ真っ暗な部屋」だったそうです。

いえ、うん。
「あーそうかー! やっぱりなー! ブラックボックス展という名前からして、それしか考えられないよー! だよねー!」
という気持ちになってしまいました。でも多分、この答えを聞いた人、みんながそう思うと思います。後出しというか。

とはいえ、実際にこの企画の特殊な点は、もう一つあります。

入るときに「詳細を書かない」という誓約書を結ぶわけですが、出たときに「ここの内容を、絶賛または酷評するために、ウソを書くのは良い」という紙を渡されるそうです。

これはなかなか見事だなと。
これによって、参加者は、ある意味「共犯」として、ネットを盛り上げていくことになります。

くわえて「自分だけが知っている」「他の人は知らない」という優越感も手伝い、さらに色々なことを書き込むことでしょう。
そしてそれはウワサとしてさらに広がっていき、また詳細がないために文字通り「ブラックボックス」感も強まり、多くの人が「自分も行ってみたい!」と思うかもしれません。自分自身もそう思いました。

ここで終われば、ものすごく見事な展示だったと思います。

実際は非常にシンプルなものを、ネットとウワサで、ものすごく膨らませ、5時間待ちもの人気になった…。
これだけで一つのアートかもしれません。(アートの定義は分かりませんが、なんかアートといえばまとまった気がするので、とりあえず使っているだけです)

でも…。

話はそれで終わりませんでした。

体を触られたなどの問題が…!

何と、「中で、男性と思われる相手に、体を触られた」などの体験を話す方が、何人もいたのです。

さすがにこれは「酷評のためのウソ」にしては数が多く、確かに真実なんだろうと思います。

実際に人間は、真っ暗闇などで「匿名性」が生じると、ついつい理性のタガが外れたりして、より攻撃的になったり、逸脱的になったりするとされています。

これを「仮面効果」と言います。

しかしここで、ふと、似たような施設を思い出しました。

◆ お戒壇巡り

長野県の善光寺に「お戒壇巡り」という施設があります。
何も見えない、真っ暗な地下道を通っていき、「人間の再生」を体験するという内容です。

小さなころから、何回か行ったことがあります。

◆ ダイアログ・イン・ザ・ダーク

これは都内で行われている体験施設。
真っ暗な建物の中で、目の見えない方の感覚を体験するという施設になります。

こちらも行ったことがあります。

今回のブラックボックス展は、この両者に非常に似ています。

しかし、これらで体を触られるなどの問題が生じた、というのは、少なくとも自分は聞いたことがありません。いえ、もちろんゼロではないでしょうが、ただここまで問題になるほどのニュースにはなっていませんし、それを受けて開催を自粛…なんてことには、もちろんなっていません。

これは一体、なぜなのでしょうか?

なぜ他の施設では、問題が生じないのか?

まずお戒壇巡りは、すごく細い、一本道だという点。
前後に人がいるため、触ったりしたら、すぐ「後ろの人だ!」とか分かりますし、逃げる場所もありません。
またたいてい、家族や仲間などと同行しているため、他の人が入り込むスキは少ないと思います。
くわえて宗教施設のため、なおさらそういうことをしたい気持ちにならないと思います。それでもやったら煩悩強すぎ。

そしてダイアログ・イン・ザ・ダークですが、こちらは「グループ入場」のシステムです。
周りの人は見知らぬ人ですが、10人前後でグループとなり、
「さぁ、みなさんこんにちは! 今から暗闇の世界にご案内します!」
というように話してから入場していました。

それもあって、「仲間意識」が生まれるため、人の体を触るなどはしにくい雰囲気だったかと思います。
くわえて明確には記憶しておりませんが、こちらは万一のため、暗視カメラなどで録画していたような気がします。

しかし今回は、
「入る人は順番に案内されるだけで、まったくの他人」
「暗い部屋(5メートル前後)にただ滞在するだけ」
だったため、問題行為が行われやすい環境にあったかと考えられます。

さらに「入るまで、まったくの説明がなかった」というところもポイント。
いきなり暗闇に入れられることで多くの方がパニックになります。実際に入っただけで「キャー!」など大声をあげている人も多かったそうです。
すると「あ、みんなパニックになってるから、バレないのでは!?」という思考が、体を触るという行為を後押ししてしまった可能性もあります。

くわえてここで、ネットの意見として、
「最初の門番の選別は、問題を起こしそうな男性を入れていなかったのではないか」
というものがあり、「なるほどなぁ」と思いました。結果的に焼け石に水だったわけですが。

ちなみに他に「治療の必要がある人間だけを中に入れており、必要がない人間は入れなかったのではないか」という意見もあったのですが、もし最初の意見が正しければ、真逆だったということになります。切ないです。

どうすれば防げたのか?

では今回のことは、どうすれば防げたのでしょうか?

いえもちろん「最初からやらなければ良かった」というのは、あまりにアレなので、開催の上で、どうすれば良かったか、というのを考えてみます。

◆ 「男女別にする」

まずは男女別にすれば良かったのでは、という考え。
ある意味、男湯と女湯みたいなものです。

こうすれば問題は、格段に起こりにくくなったかと思います。くわえて「男ではこうだったけど、女はどうだったんだろう…?」みたいな思考も生まれ、さらにブラックボックス要素は強まったかもしれません。

とはいえ、「男性が男性の体を触る」や「暴力行為」などは生じていた可能性があります。

◆ 「展示をもっとシンプルにする」

たとえば「暗い部屋」ではなく、それこそ明るい部屋にブタのぬいぐるみなどを置いておいて、

「残念でした! 何もなかったよ!
でも外には言わないでね! 他の人たちをダマすために、ネットをウソを書いてね!」

など張り紙をしておけば、原理的には同じことが起こったのではないでしょうか。

ただ、あまりに内容がシンプルすぎて、クレームで暴動が起こったかもしれません。

◆ 「グループ制にする」

そして、ダイアログ・イン・ザ・ダークのように、グループ制にするという考え方。
とはいえ、グループにすることで、「安心感」が生まれてしまうので、
「突然のドキドキ」や「ブラックボックス感」は、減ってしまっていたかもしれません。

ここで重要なのですが、この展示が人気を博した要因として、

「何が起こるか、まったく事前説明がない状態で、いきなり真っ暗闇の部屋に入れられる」

という点があったのかもしれません。

それにより「緊張や恐怖のドキドキ」から「あぁ、こんなのだった!」という安心感から強い落差が生まれて、
「よし! 自分も詳細は話さないでおこう!」
「それに何か、楽しかった気がする!」
という気持ちになったのではないでしょうか。

実際に催眠では「驚愕法」というものがありますが、人間は、強い驚きや不安などを感じていると、暗示にかかりやすくなるものです。

それこそ「展示がもっとシンプル」だったり「みんなで一緒にグループで入る」とかですと、最初のドキドキがないため、ここまでのインパクトはなかった可能性があります。

そう考えると、結果的に、なかなか決定打と言える対策は、難しいのかもしれません。

まとめ

いずれにしても、非常に残念な結果になってしまったわけですが、企画のアイディアそのものは、とても面白いと思いました。

言うまでもありませんが、一番悪いのは「触った人」です。これはもう間違いなく。
ただ当然ですが、その人たちを捕まえるのはほぼ困難です。だからこそ、主催者の方に、一番の責任追及が向かってしまっているんだと思います。もちろん「途中で気づいたら対処のしようがあったのでは!?」みたいな意見はもっともなのですが、ある意味、初めての試みで、そこまでベストな状態ですべてを行う、というのはなかなか難しいことなのではないでしょうか。少なくとも自分が主催だったら、たぶん難しかったと思います。↑の対策も、結局は後からの分析ですから。

何にせよ、すべての人に幸せな企画というのは、すごく難しいことなんだなぁ、とあらためて思いました。

 

ちなみにブラックで思い出しましたが、自分は学生時代、全身真っ黒な服を着ていました。
黒のズボンに黒いワイシャツに、黒いロングコートです。
「漆黒の騎士の生まれ変わり」だと勝手にイメージしていました。

おかげで寄りつく女性が激減しました。

自分の人生がブラックボックスであることを思い出しつつ、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

(完)

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このページは、ゆうメンタルクリニックの医師・スタッフが監修・制作しております。

特別監修・ゆうきゆう
精神科医、心理学者。
東京大学医学部医学科を卒業後、うつ病・統合失調症・てんかん・パニック障害・社交不安障害・不眠症など多くの疾患の治療を行い、2008年よりゆうメンタルクリニックを開院。
『マンガで分かる心療内科』の他、100冊以上の著作があります。

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